「志望度はどれくらい?」―就活生が揺れる”本音と建前”のはざまで―
「先生、ちょっといいですか?」
研究室のドアをノックして入ってきたのは、大学4年生の女子学生。少し気まずそうに椅子に腰を下ろしました。
「面接で、『うちの会社の志望度はどのくらいですか?』って聞かれると思うんです。正直、いい会社だとは思うんですけど……第一志望っていうほどでもなくて……どう答えたらいいんでしょうか?」
本音を聞かせてもらうと、「今すぐにでも働きたい!」という熱烈な思いがあるわけではないらしい。むしろ「もっといい求人が後から出てくるかも」という期待も捨てきれず、でも何もしないのは不安だから、ひとまず選考に参加しているのだと。
「でも、そんな気持ちを正直に言ったら落ちますよね?」と彼女。
その通りです。面接官からすれば、熱意が見える学生に内定を出したくなるのは当然のこと。
しかし、彼女の気持ちもわかります。理由がどうであれ、「嘘」をつくようなことはしたくないのでしょう。
私は少し考えてから答えました。
「だったら、今この瞬間の気持ちを伝えればいいんじゃないかな。面接の場で選考を受けている以上、その瞬間は『受かりたい』って思っているはずでしょう?」
「……まぁ、そうですね」と彼女。
「だから、聞かれたら『第一志望です』と答えたらいい。ただし、それは“今この時点では”ということ。将来別の企業を受けて心が動いたら、そのときにまた改めて考えればいい。最終的に辞退することになったら、きちんと誠意をもって謝ればいいんです」
彼女は少し驚いたような顔をしました。
「辞退って、そんなに後ろめたいことじゃないんですか?」
「もちろん、軽く扱っていいわけじゃない。でもね、社会人になれば『計画通りにいかないこと』なんて山ほどあります。そのときに大事なのは、自分の選択に責任をもつこと。内定を辞退するのも一つの責任の取り方で、誠意を持って伝えれば問題ないんです」
ここで彼女はふっと肩の力を抜いて、机に置いていた手を少し広げました。
「なるほど……“今の気持ち”か。それなら言えそうです」
私はさらに付け加えました。
「面接官も、“この学生は今ここに全力で向き合っている”と感じられれば十分なんだよ。むしろ、何を言っても迷いがにじんでいると、どんなにきれいな言葉を並べても伝わらない。だから、言葉そのものよりも、“今この会社に入りたい”という姿勢をどう表すかが大切なんです」
彼女はホッとしたように笑い、「ちょっと気が楽になりました。面接では“今の気持ち”を大事にします」と帰っていきました。
就活では「本音」と「建前」の間で揺れる学生がたくさんいます。
でも、未来のことは誰にもわかりません。
だからこそ大切なのは、「今の自分はどうしたいか」を正直に表現すること。そして後で気持ちが変わったときは、責任をもって向き合うことです。
志望度を問われる質問は、学生にとっては悩ましいものです。
でも、そこで大切なのは「未来の保証」ではなく「今この瞬間の覚悟」。その素直な言葉が、面接官に一番届くのだと思います。